Episode#01 [じゃんけん必勝法・其の二〜操拳の章〜]

「心を攻めるを上とし、城を攻めるを下とする」〜三国志より〜
(蜀の諸葛亮孔明に仕えた軍師・馬謖の言葉。
 戦えば必ず損害が出る城攻めよりも、敵の心理を攻めることが上策と説いた…)

前章では、「〜という傾向がある」という程度の、長い目で見た確率論における 勝率アップ法を述べたが、その戦法では「必勝」と呼べる域にはまだ遠い。
さらに上に行く時は、相手の出す「手」を一点読みする…
もしくは相手の心理を操作して、こちらの望む「手」を出させる技術が必要となる。

キャラクター演出作戦

前章で触れた「人物像ごとの出しやすい手の傾向」に対するヨミは、 じゃんけん必勝法を極める者ならずとも、 意識して、あるいはほぼ無意識のうちに行っているものである。
ならば、それを逆利用せぬ手はない。

仮にあなたが、「立派な体格、太いマユゲ、純粋そうな瞳」をもった 佐々木健介のような「体育会系」の外見だったとしよう。
だとしたらそのキャラを怪しまれない程度に誇張して、相手に伝えてみよう。
まず、じゃんけんの前に気合いをしめす…

「よーし、じゃんけんで勝負だー、いくぞーー!」

そして、コブシを軽くにぎり、反対の手でつつんでコネコネする。
目はあくまで真剣に、口元はキキリと結ぶ。

どうだろう? 「いかにもグーを出しそう」な気配ではないだろうか?
これが自身のキャラクターを利用した「キャラクター演出作戦」である。

もしもあなたが、「メガネ、痩身」でオギヤハギの矢作クンみたいな外見だったら、
チョキを出しそうな気配」の誇張を試みてみよう。

「ん・・じゃんけんね・・フフ・・負けないもんね・・」

などと、イタズラっぽく笑い、 両方の手を軽く合わせ、指と指を交互に組んで、軽く動かす…
指の間隔を拡げるような動き…とりようによっては、チョキの前触れ…
そして、口元をペテン師の如く歪め、カラダ中からチョキのオーラを発生させるのだ。

もしもあなたが、天然系の女のコ(ゆうこりん系)だったら、
そのときは「パー」を出す演出にチカラをいれてみよう。

「じゃんけん♪ じゃんけん♪ 負けないぞ、イエイ♪♪」

…などと、天使のように歌いながら、軽くステップを踏む…
オテテを顔の両サイドにもっていって、グーパーしながら、満面の笑み…
このコが「パー以外を出す」とは、とても想像できないであろう。

自分がいずれのキャラクターにも当てはまらないと感じるのなら、 とりあえず男性なら「グー」の演出が自然に映る。
女性の場合でも、「グー」の演出が妥当であろう。
じゃんけんは勝負事なので、 普段の自分を捨てて、「気合いの演出」をしても不自然ではないハズだ。

あとは言うまでもなく、自分の演出した手に勝つべく出した相手の手の、 逆をつけば、勝利はおのずと転がり込むであろう。

演技の心得としては、「手」を出す寸前までは自分にも暗示をかけること。
たとえばグーであれば、寸前までは「グーでいくぜ♪」と信じ込んで演技する。
そして、「じゃ〜んけ〜ん…」と振りかぶったその刹那に、 頭を咄嗟に切り替えて、「チョキ」を出すのだ。
(瞬時の切り替えが必要なので、事前に「本番はチョキ」と脳内確認するとよい)
敵を騙す時はまず味方から…この場合の味方とは、すなわち自分のコトである。

また、ボディアクションによる「サブリミナル効果」も、演出には欠かせない。
グー」の場合の口元キリリ、
チョキ」の場合の指関節をひらく動き、
パー」の場合のオテテをグーパーがこれにあたる。

操るべき敵は、相手の無意識にある。
真剣な演技は、時に相手の無意識を動かすことをココロに刻んでおこう。

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カニカニ作戦

先に述べたのは、いわば「自分を単純に見せかける」作戦だったが、 この「カニカニ作戦」は、自分を腹黒い、策謀に満ちた人物と認識させる作戦である。
さっそく実例を上げて説明しよう。

黒服にサングラスのアヤシゲな風貌の男が、口元に余裕の笑みを浮かべ…
「オレはカニのよーにじゃんけんが強い男だぜ…」
「いいかい? オレはカニのよーに強いんだぜ…」

…と呟きながら、じゃんけんの勝負を挑んできたら、 あなたはこの男がどの「手」を出すと読むであろうか?

カニのよーに」とはすなわち、この男が「チョキを出す」と宣言しているようなものである。
だがそれは男の態度から、とても本気の宣言とは思えない。
こちらを「手の読み合い」に持ち込んで、心理を見切った上で勝ちを得よう… そんな男の算段が、その不敵な笑みには隠されているようだ。
だが結局、相手の手を読み、そのまた裏を…という考えは、袋小路に陥る。
思考の袋小路に陥った人間は、様々な可能性を意識しすぎて、 マイナス思考…つまり、「この男の術中には落ちたくない」という心理に至るのである。

「オレはカニだ。カニのようにじゃんけんが強いんだぜ…」

…指でチョキチョキとカニカニ運動を繰り返しながら、男の呟きは続く。
マイナス思考に陥った人間は、この男の「宣言通りのチョキ」に対して、 自分が「パー」を出して破れることに嫌悪感を覚える。
なぜなら、男が「チョキ」で勝ったアカツキには、
「ほら、オレがカニのよーにじゃんけんが強いって言っただろ?(ニマ〜リ)
…と、得意げに笑う情景が、視覚的に浮かんでくるからである。
じゃあ「グー」かな「チョキ」でいこうかな…えーい… …こんな心理が、マイナス思考に陥った対戦相手の、ありがちなパターンなのだ。

つまりカニカニ男からしてみれば相手の「パー」はナイ。 「グー」か「チョキ」…ならば、悪くてアイコの「グー」を、カニカニ男は選択する。 相手の顔色に対する洞察と併用すれば、この瞬間、 「必勝」とは呼べないまでも「負けはナイ」という確信を男は得ることができる。

相手がこちらの術策の踊らされず、動じず、眼光に勇気を秘めている場合は、 あっさりとこちらの作戦は捨てて、 てきとーな手を出して、ランダムに委ねればいいだけであり、 カニカニ男にとっては、リスクはナイのである。

なお、「カニのよーに」という下りは、「チョキ出します!」という ストレートな宣言に変えてもいいのだが、この作戦のキモは、 相手を挑発、誘導して、思考の袋小路に追い込むことにあるので、 間接的な表現をもちいて、なにかしら相手の思考を誘発するものが望ましい。

たとえば、「V作戦発動…これより敵を殲滅する!」とか、 「コンバトラーVのテーマ」を口ずさんでみるとか(チョキを表す) 「ハマの大魔人…佐々木投手直伝のじゃんけんを披露する!」
…などと宣言して、フォークボールの握りであるチョキを連想させる手もある。

こちらが、「チョキを出す」のイメージを打ち出すのは、 相手にとって「パー」で出して負ける光景が、視覚的に滑稽であり、 「パー」という語感に秘められた負のイメージもあり、 相手のマイナス思考を増幅させる要因となるからである。

この「カニカニ作戦」ような、言葉や態度による心理の操作は、 相手の人物像にも大きく依存し、数限りないバリエーションが考えられるだろう。
人間研究を重ねて、臨機応変な作戦を繰り出せるようにしておきたい。

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