じゃんけん必勝法

「兵は詭道なり」〜孫子の兵法・始計扁より〜

(戦争は騙し合いであり、勝利のタメには手段を選んではならないと説いた孫子の言葉…)

さて、いよいよ最終章である。これまで述べてきた「必勝法」の基盤となる「人間の心理のクセ」を究極レベルにまで追求した「際どい勝ちかた」を記していく。

“人間” と“人間” の関係の根幹を為すものは「信用」である。そしてそれこそが“人間” の持つ、もっとも陥りやすい「心理的な癖」と言える。

その「信用」を「裏と表」の両側から利用し、「必勝」を得る作戦について触れる。

 信用を勝ち取り、陥す「鋼鉄のグー」作戦

生活における『じゃんけん』の「勝ち」には、1勝の重みに天と地ほどの開きがある。
1万円を賭けた勝負の「1勝」と、1円を賭けた勝負での「1勝」ではその重みにおいて、1万倍の差があることを強く認識するべきである。

もちろん金銭を“賭け” て『じゃんけん』をすることはあってはならない。だが『“重い”じゃんけん』、つまり『“負けられない”じゃんけん』の経験は、誰しもが持っているはずだ。

体育祭の出場種目を決める『じゃんけん』で、「負けたら400M走しか残っていない」

体力のない者、足の速さに自信がないものにとって、400M走は地獄の競技であろう。天国か地獄かを判定する、“重い” 勝負なのである。

真夏のキャンプ場で雨。清流に冷やしたスイカを忘れていることに気がついた。
雨を避け、3キロ離れた友人宅に向かう途中でスイカを冷やしたままであることに気がついた。
結果『じゃんけん』で負けると回収に向かうことになる。気の置けない仲間内での座興だが、限りなくその勝負は“重い”
給食の配膳で残ったものをもらえる『じゃんけん』で、人気のデザートが。

昨今の給食には、イベントの日に豪華なメニューや、デザートが付くことがある。そのメニューが配膳のあと残ったとき『じゃんけん』で勝ち抜いた人がそれを頂けるというイベントが発生する経験があるだろう。小学生なら、なんとしても「勝ち」を得たい『じゃんけん』だ。

このような『“重い” じゃんけん』があるということは、『“軽い” じゃんけん』もまた、存在するというこだ。

給食を例にとれば『じゃんけん』で争う料理が、毎日提供される“牛乳” “パン”、小鉢的な扱いの“ひじきの煮物” あたりであれば、『“軽い” じゃんけん』と言えるであろう。

この『じゃんけん』における“重み” の差を利用して、「信用」を築き、最終的にその「信用」を裏切る。そこで限りなく“重い” 1勝を確実に得るのが、この「鋼鉄のグー」作戦である。

理屈は簡単だ。給食の余り物が出る度に、争奪『じゃんけん』に名乗りをあげ、「鋼鉄のグー」と高らかに宣言してから、「グー」を出して負け続ける。

献立表を確認し、“揚げパン” や“ミルメーク” の時も、欲しいキモチをぐぐっとこらえて、気持ちよく負ける。
道化を演じ続け、ネタとして笑いをとりたい姿勢だけを見せる。

仲間内での「信用」を勝ち取り、“牛乳” でなく“ジョア” が、デザートに“ケーキ” が賞品になる、その日がくるまで。

鋼鉄のグー」がネタとして浸透し、給食争奪『じゃんけん』がパー」で始まるようになれば、“重い”1勝をあいこなしの一撃で勝ち取れる「必勝の快感」に、あなたは酔いしれられることになるだろう。
なお、「信用」を裏切るということで発生する人間的な汚点は、「あくなき『じゃんけん』への執念」というバカバカしさによって帳消しになるハズである。逆説的に言えば、この程度の裏切りが人物評価として、致命的な汚点になるような『“重い” じゃんけん』は、あってはならない『じゃんけん』なのだ。

 究極奥義…メシおごり作戦

鋼鉄のグー作戦」が、信用を逆手にとる作戦だとしたら、 この「メシおごり作戦」は、裏の奥義。相手との信頼関係をまっすぐに利用した作戦である。

作戦名以外にも「ゲームソフトを貸してあげる」「来週の掃除当番を変わってあげる」など、 相手にとって利益となるものを進呈する約束を交わし、その見返りとして、相手の「出す手」を限定的にする作戦である。

具体的には、スマホなど携帯電話のメールフォームを利用して、

グーを出してください。グーを出してくれたら、回転寿司を食い放題でご馳走します。
グーを約束していただける時は、髪の毛を2回かきあげてください。
なお、このメールのことは、社内では内密にお願いします」

…などという定型文を、前もって用意しておくのがよいだろう。
そして、いざじゃんけんの場に臨んだとき、相手に対してメッセージを送信するのである。

じゃんけんの賭け対象となるモノが、「回転寿司食い放題」より軽い時は、この作戦は、まさしく「必勝」を呼ぶ策となりうる。
「確実に勝つ!」などと大言壮語して、絶対的勝利の快感に酔おう。

なお、この作戦で「賭け対象」となるものより大きな損失を本人が負ってしまったら、 結局は損(=負け)なのではないか?…という見方もあると思うのだが、それは違う。
「回転寿司食い放題」を実施する時には、じゃんけんの勝ち負けのことや、その時に敗者が負った軽度な罰ゲームなど、当人同士の間ではどうでもよくなっており、「普通にメシをおごる」という互いの親交を深める効果が、見込めるからである。

つまり、「じゃんけんでの勝利」+「メシをおごった効果」が勝者にはもたらされるのである。

The END